精神科病棟勤務中に起こった出来事

看護師ブログ

患者さん窒息その1

あれは日勤帯での出来事でした。その日は病院のイベント(運動会みたいなやつです)があって、病棟のスタッフと患者さん数名はそのイベントに参加するため、外の広場に出ていました。2~3人のスタッフは病棟に残っていて、私も居残りしていました。

患者さんたちのおやつの時間というのがあって、その時間になるとみんな食堂に集まり、看護師がそれぞれの患者さんにおやつを渡します。食事制限のある患者さんもいるので、その患者さんによってきちんと決められた量のものを渡していきます。私はその日はおやつの担当ではなかったので、ほかの仕事をしていました。(点滴の確認や褥瘡の処置をしていたと思います。)

おやつ担当だったおばちゃん看護師さんが、食堂に集まって自分の順番を待っている患者さんにおやつを配っていた時、急に男性患者Uさんがビスケットを箱ごと奪って自分の部屋に持って逃げて行ってしまったそうです。おばちゃん看護師さんは、自分が目を離した一瞬の隙に箱を取られたと言っていました。でもほかの患者さんがまだけっこう並んで待っていたので、後から箱を回収しにいこうとUさんのことは後回しにしてしまったそうです。全部の患者さんにおやつを配り終わって、おばちゃん看護師さんはUさんの部屋にビスケットの箱を返してもらうために行きました。

「誰か来てーっ!!!」

おばちゃん看護師さんの悲鳴ともとれるような大声が、病棟内に響き渡りました。私はその時ちょうど一通りの仕事が終わってナースステーションに戻る所でしたが、急いでその声がした方へ行きました。おばちゃん看護師さんが血相を変えて走ってきました。「Uさんが大変なことになってる!お菓子詰まらせてる!!」と言ってまたUさんの部屋へ戻っていきました。何も持たずに、テンパっていたんでしょう。私はすぐDrにコールし、病棟に来てもらうよう手配し、心電図モニターと掃除機、掃除機に取り付ける吸引用のキットを持ってUさんの部屋へ行きました。

窒息(何かを喉に詰まらせた)時は、普通の吸引器では吸引の威力が弱いので、掃除機を使います。ちゃんと掃除機に取り付けれる専用の吸引キットがあります。

部屋へ行くと、顔面蒼白ですでに呼吸停止し床に横たわっているUさんと、一生懸命Uさんの口の中のビスケットを手でかき出しているおばちゃん看護師さんがいました。私は「今先生呼びましたから」と言って掃除機の準備をしていたら、病棟に残っていたもう一人の看護師(私の後輩)と、Dr二人が急いでやってきました。私は後輩看護師Yちゃんに、「救急カートも持ってきてくれる?」と指示しました。

救急カート:緊急時に使う医療道具が一式入っているカート。注射薬や内服薬も常備されている。毎日薬剤は薬剤師さんが、医療道具は私たち看護師が点検をして、不足品や期限切れのもの、故障など不備がないか管理している。

先生の指示でUさんに心電図モニターを装着しました。すでに心肺停止状態でした。心肺蘇生をする前に喉に詰まっているビスケットを出そうと、喉頭鏡を使って口を開きDr二人で口の中のビスケットを取り除こうとしましたが、取っても取っても喉の奥が見えないほどの量のビスケットが詰まっていて、どうすることもできませんでした。Uさんは、「一体どれほどの量のビスケットを一気に口に詰め込んだんだろう」と私は思いました。せっかく箱ごと取れたのに、また持っていかれると思って慌てて一気にほおばってしまったのでしょう。Uさんは糖尿病も患っていたので、食事制限がありました。ずっと我慢していたんでしょうけど・・・。

部屋で倒れているUさんを発見してから、30分くらい経っていました。先生が「もう無理だから止めよう」と言いました。心肺停止状態から約30分くらい経っていたので、さすがに無理なのはもうみんなわかっていました。

院長に連絡し、警察を呼びました。

病院内で窒息や自殺、不審死等が起きた場合は変死になるので警察に連絡し、事件性がないかを調べてもらう必要があります。現場にいたスタッフやそれに関わったスタッフは、警察に事情聴取されます。

間もなくして警察が数名で病棟にやってきました。この日はイベントの日で、元気なわかる患者さんは病棟にいなかったので良かったです。精神疾患の患者さんたちは、こういったことを目の当たりにしてしまうと精神状態が不安定になってしまう可能性があります。できるだけ、わからないようにするべきなのです。

警察による検死が始まり、私たち病棟に残っていた看護師3名と、関わったDr2名は検死が終わるまで待ち、終わった後は一人ずつ事情聴取です。事実確認をするのです。私とおばちゃん看護師さんは何度か経験があったので落ち着いたものでしたが、後輩はこういったことは初めてだったので、「ヘンに疑われたらどうしよう」と不安そうにしていましたが、「あったことを話すだけだから大丈夫よ」と励ましなんとか話せたようでした。いつも事情聴取の時、名前・生年月日・年齢・住所など個人情報をいくつか聞かれるのですが、私も警察に「またこの人の時か」とか思われたくないなと少し思いました。

検死と事情聴取の結果、食物誤飲による窒息死ということで(当然そうなんですが)、事故扱いになりました。

精神科って本当に事件・事故が多いように思います。特に誤飲自殺は多いです。うつ病の患者さんはある程度治療をして、回復し始めている人に自殺が多いです。最初は自殺を考える余地もないくらいにうつ状態で憔悴しているからできないんですが、回復期に入ってくると、少し元気になっていて考える余地も出てくるようなんです。精神科は任意入院の場合、患者さんが自分で入院も退院も決めることができます。回復期の患者さんを退院させるのはハッキリ言って怖いです。でも、「退院したい」と患者さんが言えば、退院させないといけません。なんか、そういうルールらしいです。そして退院したあとに、自宅で自殺というケースも実際ありました。

誤飲は今回のUさんのように一気に食べ物を詰め込んでしまったり、お年寄りは物を飲み込む嚥下機能が低下しているため誤嚥を起こしてしまうケースがあります。

こういった事故が起きないようにスタッフもこまめに巡視をしたりしますが、それでも全て回避できるわけではないのです。悔やまれます・・・。

こういうことがあった後は、何度経験しても心身共に疲れます。ショックで看護師辞めてしまう人もいますが、自分はこの仕事やっぱり好きなので、がんばれます。がんばります!!

次回は患者さん窒息事故その2を書きます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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